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【02.気体の熱力学】
「2気体の熱力学」のところで、エンタルピーとエントロピーの違いがよくわかりません。
わかりやすく整理してください。
アドバイス

エンタルピーとエントロピー、名前はよく似ていますがかなり違ったものです。
ガス利用機器で関係が深いのはエンタルピーの方です。
教材の説明で:H=E+PV という式で説明していますが、エンタルピー(H)は《気体の温度のエネルギー(E)》に《気体の持っている圧縮のエネルギー(PV)》を加えたものです。
ガスを燃料として用いたり、高圧の水蒸気を用いたりしたエンジンやタービン等の原動機で取り出す動力エネルギーを評価するときに使われるエネルギー単位です。

一方、エントロピーは大変抽象的でピンと来にくい量ですが、余り実用には縁のない物理量です。
絶対0度(0Kまたは−273.15℃)において全ての物質のエントロピーはゼロですが、熱を吸収するとその物質の原子や分子が動き回ったり拡散して拡がったりして行きます。
このときにエントロピーは増加しているのです。

少し専門的になりますが補足します。

エンタルピーはエネルギーの量を示しますが、エントロピーというのは「このような考え方の数値を用いると便利だから」という理由で、全く新しく作られたものだと考えてください。

具体的には、ある物質の温度(T)が変わらないように、少しだけ熱(dQ)を与えたとき、その物質のエントロピーの増加量(dS)は(dQ÷T)に等しい、ということにしようと決めています。
これを式で表したのが dS=dQ/T という式です。

エントロピーという数値を用いると、いろいろな現象を、うまく表すことができます。

例えば、カルノーサイクルを、温度(T)とエントロピー(S)を使って表すと、テキストにあるように、簡単な図で表すことができます。

また、可逆変化や不可逆変化のときのエントロピーの変化を計算しますと、
可逆変化では  エントロピーの変化(dS)=0 となり、
不可逆変化では エントロピーの変化(dS)>0 となります。
自然に起こる変化は不可逆変化ですので、エントロピーは増加します。